最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)639号 判決
上告人(原告) 鈴木盛 外五名
被上告人(被告) 宮城県選挙管理委員会
一、主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
二、理 由
上告理由第一点について、
選挙人名簿に登録されていても、選挙前、既に他の市町村に転居して、選挙当日、当該市町村内に住所を有しないものは、その市町村の長又は議会議員の選挙について選挙権をもたないことは、公職選挙法九条二項に徴し明らかであり、選挙の当日選挙権をもたないものは投票することができないことは、同法四十三条の明定するところであるから、本件選挙の当日、築館町に住所をもたなかつた所論日野輝子外八名の投票は無効であるといわなければならない。右と同趣旨に出でた原判決の判断は正当であつて論旨は理由がない。
同第二点について。
右は最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の事由に該らない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。
(裁判官 栗山茂 小谷勝重 藤田八郎 谷村唯一郎)
上告代理人遣水祐四郎の上告理由
(一) 原判決は、本件町長及び町会議員選挙に際し、日野輝子、千葉とくよ、後藤よしゑ、佐藤よしみ、三浦みね子、白鳥たつ子、佐藤キヨ子(以上いずれも旧姓)、佐々木正直、佐々木とよ子が、いずれも投票したこと。右の者等は、築館町の選挙人名簿に登録されていたことは、いずれも争いがないが、
証言及び弁論の全趣旨に徴して、
右の者が、選挙当日築館町に居住していない事実が認められ、この認定を左右するに足る証拠がないから、選挙人名簿に登録されているも、選挙当時既に他の市町村に転居して、当該市町村内に住所を有していない者は、その市町村の長及び議会議員の選挙について選挙権をもたない。
(二) 選挙当日、選挙権をもたない者は投票することが出来ない。
(三) 選挙権を有しない者のした投票は無効と解すべきは当然であつて、あえて法律の明文をまつまでもないところである。
(四) されば、本件選挙の当時、既に他に転居して築館町に住所をもたなかつた前記日野輝子外八名の投票は無効であり、この無効投票を町長選挙に於ける当選者原告鈴木盛の投票数から差引くと、落選候補者尾形甚吉の得票数より少くなり、又当選者原告栗原静寿、三橋養市、白鳥連助、兵藤章平、佐藤惣五郎及び訴外小野寺七郎の各得票数から差引くと、次点者佐藤昇平の得票数よりも下位に立つことになり、選挙の結果に異動を生ずる虞があるから、結局町長選挙における原告鈴木盛及び町議会議員選挙における原告栗原以下五名の当選は、いずれも無効とせざるを得ない。
(五) 以上と同見地に立つ被告の裁決は違法といえないから、原告等の本訴請求は何れも失当としてこれを棄却する。
と判決している。
右は、要するに選挙人名簿に登録されてはいるが、日野輝子以下九名は選挙当日、築館町に居住していない認定を左右する証拠がないから、選挙権をもたない。依つて、選挙権をもたない右の者の投票は無効であり、この無効投票を町長及び町議会議員当選者得票数から差引くと、夫々選挙に於て次点者より下位になり、選挙の結果に異動を生ずる虞あり。
依つて、原告の当選は無効なりとの裁決は違法がないとするものであるが、
上告人は、左の如く主張する。
第一点 公職選挙法第四十三条及び第五十条二項により、日野輝子以下九名が自ら投票を差控え、又投票管理者によつて、投票を拒否さるべきであつたことは明らかである。
然し乍ら、実際に同人等が投票した場合の投票の処置については、右両条の規定は触れることなく、且つ公職選挙法中に何等の規定がない。依つて、同法第四十三条は、同条に該当する者の単なる禁止規定と解する外ない。
然るに、原判決は裁決通り何等法律的理由をなさず、これを無効とし、しかも当選者投票数からのみ差引いて最高落選者より下位になり、当選に異動を生ずるとしているが、
右は、理由不尽といわざるを得ない違法である。
第二点 仮に、原判決の如く、右第四十三条に該当する者の投票は無効とするならば、同種の無効投票のすべてがその必要ある限り、いつでも問題とされ得るのであればとも角、公職選挙法第二〇六条第一項に規定する、極めて短期間に偶々異議申立のあつた場合にのみ、右無効投票が問題にされるというのでは、さらに右異議申立の限度が、申立人の都合によつて左右され得るという事情もあり、当選の効力の変動の上に、実際的に極めて偶然的な不公平な結果を生じることを免れない。
依つて、右の如き偶然的、不公平な結果を招来する被告の裁決に対する原告の主張に何等理由を附さないのは、理由不尽の違法である。
以上